北海道の十勝地方も暖かい日が増え春めいてまいりました
皆様いかがお過ごしでしょうか
我が診療所の管轄地区の分娩頭数が比較的落ち着いており牛にも人にも穏やかな日々を過ごしております
さて今月のテーマは臍帯炎です
湿度の増していくこれからの季節に散見するもので農家の皆様も頭を悩まされると思います
様々な箇所で啓蒙されていることですが、今一度再確認の意味もありますので
“もう知ってるよ!”
と言ったことも復習もかねて参照してもらえればと思います
以下に概要と対策をまとめました
概要と原因
臍帯は- 臍静脈
- 臍動脈
- 尿膜管
正常に娩出した場合、臍動脈は膀胱方向へ退縮し、臍静脈は閉鎖して臍帯内へ残存、尿膜管も退行します 通常一週間程度で乾燥も完了し外界からの感染が予防されます
乾燥が完了するまでの間の湿潤状態は細菌増加のリスクにさらされます(よく湿った臍帯が伸びていますよね)
宮崎大学 農学部 のうがく図鑑 第72回より引用
しかし
無理な牽引により臍帯が正常に離断しなかった場合
難産の場合
などがあると
大量出血による貧血
羊膜鞘から外部への血管露出
が認められることがあり、
これら臍静脈、臍動脈、尿膜管の上向性感染を起こすことがあります
これが臍帯炎と呼ばれます
虚弱子牛や難産による子牛の場合、伏臥時間が延長するため、腹部が乾燥しづらく臍帯炎リスクが高くなります
予防
- 分娩房の衛生的管理 綺麗なカビ等の生えていない麦稈をたっぷりと
- 適切な初乳接種 他の感染予防にもなりますのでBrix20%以上の良質初乳の給与
- 臍帯消毒 大前提として塗布時の消毒効果はあるがその後の細菌感染予防効果はないです
2%ポピドンヨードによる消毒が一般的で羊膜鞘外側のみを行いましょう(内側まで行う必要はなく感染リスクを上げる場合があります)
塗布後は再度塗布せず自然乾燥させましょう(毎回消毒すると乾燥が遅れるため)
↑乾乳舎の麦稈の深さです 手首が埋まるほどたっぷりと敷かれてあります
↑乾乳舎の麦稈量と状態です 綺麗な麦稈が充分量あります これほどあれば分娩も安心できますね
ぜひとも今一度、分娩房の管理環境や初乳接種状況、消毒状況を見つめ直してもらえると幸いです
文責 柿手